起業と倒産の失敗学（畑村洋太郎・文春文庫）

これは
ベンチャー企業として一時は成功しながらも
結果としては失敗してしまったという企業を
そのトップの傾向から分類した上で、
記録や当時の記事、
トップに立つ人間の行動や言動などから失敗の原因を分析し
失敗から学ぼうという趣旨の本であります。

全然ゲームと関係ないやんと思われそうですが、
その一節に
「ぷよぷよ」で知られたコンパイルがあり、
しっかりゲームと関係がある書籍なのです。
当時の倒産リストにはヒューマンやデジキューブもあり、
そちらも載っていれば言うこと無しだったのですけれど
他にも空気清浄機のカンキョーや居酒屋チェーン北の家族など
なじみ深い会社もあったので
最後まですんなり読み通すことができました。

タイプが分類されているように
人間としてはずいぶんと違う人たちではありますが、
基本的な部分で彼らには似た部分が多く、
たいていの場合
ワンマンかつ上昇志向が強いうえ財務に暗く
イケイケドンドンの拡大戦略がそのうち自転車操業のようになって自滅
（コンパイルの場合は地元電力会社と変わらない求人数や膨大な広告費などが身の丈を超えた）
というパターンでして、
それは現在栄えてるところでも
当てはまる会社はあるよなぁなんて思うのですが、
その過度な自信や行動力があったからこそ
起業に成功したとも言えるわけで、
立ち上げるエネルギーと
（身を引くなど他力を上手く使う事も含めて）成功を維持する能力
この二つが両立している人が少ないことが
せっかく成功しても維持できない事が多いという傾向に
拍車をかけているのではないかと感じました。

なお
この本では国や社会がベンチャー企業に優しくない事も一因に挙げていましたけれど、
それ以上に
株式公開したあとでも
（本田宗一郎など例外もあるが）会社を個人の所有物みたいに思いがちな国民性や、
一から立ち上げた自信や執着などから謙虚さや聞く耳を欠き、
会社の規模が自分の能力を超えたと気づいたときには遅かったという
裸の王様状態（こちらは言及されている）の方が大きな要因でしょう。

ちなみに
ゲーム会社の場合は一族経営も多く、
せっかくの株式公開も
ユーザー目線を失い
目先の利益にはしるようになったという悪影響の方が大きいので
残念ながら
今後も倒産・統廃合が進むと思われます。

起業と倒産の失敗学 (文春文庫)

• 作者: 畑村 洋太郎
• 出版社/メーカー: 文藝春秋
• 発売日: 2006/07
• メディア: 文庫

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タグ：起業と倒産の失敗学

コメント 4

コンパイルの倒産を聞いたときは、
ぷよまんが売れなかったのかな、などと、
漠然と考えておりましたが、
ちゃんとした分析がされているのですね。

意欲的な作品を開発していたゲーム会社の倒産を聞くたびに、
○○の続きはどうなるのかな、などと、
手前勝手な心配ばかりしております。

余談ですが、亡父が生前、会社建て直しをいくつかしまして、
建て直し後、用済みだとばかりに追い出された会社は、
すぐに、また経営危機に陥るのに、
立て直した後も、付き合いがある会社は、
倒産することなく健全経営を続けていたのが、
印象に残っております。
by setakemura (2009-07-24 10:18) 

setakemuraさん、おはようございます。
コメントありがとうございます。
ぷよまんは売れてたんですけど、
他のグッズは不良在庫も多かったみたいですね。
本格的に傾く直前くらいに通販でもグッズのセールがあって
応援を兼ねていろいろ買ったのを思い出しました。
その通販などのDMもしょっちゅう送ってきてたので、
広告費の占める割合は高いんだろうなと素人目にも分かる状態でした。
そういえば
神宮寺などデータイースト系のその後は
比較的救われている感がありますけれど、
会社によっては
海腹川背とか迷走しているものも少なくないですね。

それから
お父様は凄い仕事をされていたんですね。
立て直し後のお話は、
頭を打っても謙虚になれない経営者の末路という気がしました。
そんな会社の一般社員はお気の毒としか言いようがないです。
by どらお (2009-07-25 08:17) 

こんばんは。
「なんだこのエントリは」と思ったけれど、納得。

ボクのブログは、よく「話題が飛びすぎ」とお叱りを受けますが、
どらおさんは、話題豊富でありつつも、
実はゲームに関連づけられてるのに関心したり。

最後の段落はちょっと悲観的ですね。
ゲーム市場は停滞気味ですけど、
予想外のヒットが生まれるといいですね。
by ケン (2009-07-25 21:51) 

ケンさん、おはようございます。
コメントありがとうございます。
そう言っていただけるとありがたいです。
自分もゲーム以外にも
映画やサッカー、漫画等好きな物は多いですし
それらを語ってみたい時期もあって
漫画などはブログも試してはみたのですが、
どうにも語りきれないというか納得のいく所に到達しなかったため
結局ゲーム一本に戻ることと相成りました。
なので
映画・書籍にはじまり
ゲーム・サッカー・政治・アイドルなどなど
ジャンルが幅広いだけでなく
どれも読ませるというケンさんは凄いなと思います。

最後の段落はそうですね。
あまりネガティブなのも良くないとは思うのですが、
その方がちょっと良いことがあっても喜べるかな
なんて思ったりして（汗）。
by どらお (2009-07-26 07:47)